寿星と云う別名もまた,願いをかなえる力の証だろうか。
quote:20時過ぎ,南の空にオリオンがみえるころ,その下方にはシリウスとカノープスというふたつの明るい星がみえる。シリウスは全天でもっとも明るい星で,地球上のあらゆる箇所でみえる。そしてシリウスの次に明るいカノープスは,北緯37.9度線より南でみえる。そのため欧州やカナダ,北米国ではみえない。カノープスは黄色やオレンジ色にみえるが,本当は白銀に輝いている。
冬になると,いつもオリオンとシリウスを見上げていた。ボクは子どものころ,北東北の日本海側に住んでいて,そこでは冬はほとんど晴れることはない。いつも曇天で,当然だが連日雪が降り続く。天気に文句を云っても仕方なく,いつも曇天の下で暮らすことになるのだが,たまに晴れて夜空がみえると,すぐにオリオンとシリウスが目に入った。ボクは,当時大好きだったちょっと古いアルバムの「シリウスまで自転車」を聴きながら,寒いなかでその夜空をずっと見上げていた。
そのころチャットしていた人で,リナと云う名前の人がいた。どこに住んでいるのか,男性なのか女性なのかもわからなかったけど,ふと話していて,「星に願いをかけるときに,それはどの星かな」なんて話をしていた。ボクは当然のようにシリウスだろうと答えると,リナはカノープスでしょ,と云っていた。ボクの住んでいるところからはカノープスなんてみえなかったから,もう少しリナの話をきいた。赤く輝くが,火星やアンタレスとかとは違い,どこか夕焼けを思い起こさせる赤,地平線付近にあるから沈むのもシリウスより早く,カノープスとの出会いは偶然を思わせる,そんなだから,願いをかなえてくれそう。ボクがカノープスを目にしたのはおとなになってからだったが,あのときの思い出もあってか,その淡い赤色は,確かに希なる煌めきにみえたのだった。今夜は,カノープスまで,自転車を走らせよう。
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